集団生活を送っていると、どうしても避けられないものの一つに感染リスクがあります。
昔から数年に一回、どの施設でも、どの病院でも、どこからともなくやってくる集団感染。そのなかの一つに疥癬という病気を聞いたことありますか?
この記事を読むと解決すること
- 疥癬ってどんな病気?
- もしも感染したら?
- 医療従事者として働いていて思うこと
この記事を書いているのは、
国家資格 作業療法士として病院や施設で15年勤務。
患者さんやご家族から相談を受けること100件以上。
相談業務で独立した やまざきが解説いたします。
一部、痒くなるような話も出てきます。
苦手な方は、ごめんなさい(汗)
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疥癬について
疥癬(かいせん)は、ダニの一種であるヒゼンダニが皮膚に寄生し、人から人に感染する病気です。
日本では、病院や高齢者施設、養護施設などの集団生活を送る場所で発生する事例が多くみられます。感染防止対策マニュアルの中にも、疥癬の項目があるぐらいに医療や介護の業界では問題になっています。
15年間の臨床経験の中で、私も病院や老人保健施設で実際に数回関わりました。感染すると完治までに時間を要する厄介な病気ですが、正しい知識をもって対応をしっかり行っていれば感染拡大をなんとか抑えることも可能な病気です。
まずは、疥癬についての知識を深めていきましょう。
その① 症状
疥癬に感染するとあらわれる代表的な症状の一つに
かゆみが挙げられます。
この激しいかゆみは特に夜間に増強し、睡眠を妨げられることもあるそうです。
しかし、高齢者の場合はかゆみを訴えず、皮膚の弱い所(指の間、手首の内側、肘)などに赤いブツブツや、皮膚に角質がたまっているような分厚い状態になるなどの症状から発見されることもあります。
その② 疥癬の種類
大きく分けて2種類あります。
通常疥癬
一般的に疥癬というと、この通常疥癬を指します。
これは強いかゆみが生じ、疥癬トンネルというヒゼンダニが通った道筋が残ります。
角化型疥癬(ノルウェー型)
この疥癬は、桁違いにヒゼンダニが増殖されます。もし施設や病院で複数の集団感染者が出ると、保健所への届けも必要になる感染症です。
患部は灰色や黄白色に肥厚した皮膚となり、亀裂も生じます。
通常疥癬のヒゼンダニは数十匹に対して、この角化型疥癬は100万~200万匹と言われています。
角化型疥癬は恐ろしい!!!
その③ 感染経路
ヒゼンダニの大きさは、肉眼ではほとんど見えない0.4ミリメートル。卵型、円盤状。
卵→幼虫→若虫→成虫と約2週間で成熟します。
皮膚正面を歩き回って移動し、雄は雌を探します。そして交尾後、雌は角質層にトンネルを作って進み、4~6週間にわたって1日2~3個ずつ産卵し3~4日で孵化(ふか)します。
発疹ができたり痒くなったりするのは、虫体や糞に対するアレルギー反応ともいわれているそうです。
なんか痒くなってきました~~~~
なんだかゾワゾワしてきましたが、生態を知ることで感染経路を知り、対策にもつながります。よろしければもう少しお付き合いください。
皮膚の中を移動するということは、乾燥に弱い!ということです。
皮膚から離れると2~3時間ほどで死んでしまいます。さらにヒトの体温より低い温度では動きが鈍く、16℃ではほとんど運動しなくなります。
感染したら、、、
疥癬が発症しないように日頃から対策をとることがもちろん一番大切です。
しかしながら、疥癬がなぜ発生するのかは未だ謎に包まれています。よって、もしも感染者が出た時の対応策について説明していきます。
治療方法
ヒゼンダニを殺すことを目的とした飲み薬や塗り薬が使われます。
卵から成虫になるのに2週間ほどかかるため、治療も2週間程度行うケースが多いです。
皮膚が接触するような距離で過ごしていた方も、感染を疑い皮膚科で検査を受けるか、予防投与で塗り薬を数日行うことがあります。
感染拡大を予防するために出来ること
通常疥癬と角化型疥癬とで、感染拡大を予防するための対策に多少の差はあります。しかし感染者を増やさないためには、人命に支障がない範囲でやりすぎなぐらいの対応が必要な時もあります。
ご自宅でもできる対策として、以下に具体例を挙げます。
- こまめな手洗い
- タオルは使いまわししない
- 洗濯後は乾燥機で20~30分間熱を加える
- 換気を行い、拭き掃除などでダニが舞い散らないようにする
ちなみに、バルサンや殺虫剤などの効果は立証されていないようです。
人肌から落ちたヒゼンダニは数時間で死滅するので、皮膚接触以外はさほど神経質にならなくても大丈夫です。
施設や病院での対応
清潔を維持することが早期撲滅になるため、毎日入浴しヒゼンダニを洗い流すように努めます。
また床に落ちた皮脂やフケなどはこまめに掃除。
角化型疥癬の場合は、感染力が強いため個室隔離として対応することがあります。また感染者へ接触するときはナイロンエプロンと使い捨て手袋を使用し、ヒゼンダニの運び屋にならないように配慮を行っています。
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最後に。臨床経験を通して感じたこと
疥癬であるかどうかを診断するには、皮膚科医によって行われることが多いです。
皮膚の一部を切り取り、拡大鏡などでヒゼンダニの体の一部がないか、卵がないかを調べます。皮膚全体を調べるわけではなく、寄生している可能性のある皮膚を数ミリ切り取るわけですから、そこにヒゼンダニが居なければ『陰性(感染していない)』と判断されます。
しかし、採取した皮膚の1センチとなりにはヒゼンダニが居るかもしれません。
見落としていて、感染を広めてしまった!
これが実際に現場では起こっています。
どんなに優秀な皮膚科医でも、ヒゼンダニ検出率は60%前後と言われています。問診や皮膚状態で疥癬が疑われる場合は、予防投与で内服が行われることもあります。
現場では、必死で感染拡大を防ぐべく数週間はピリピリした状況が続いています。
「疥癬のせいで面会禁止になってしまった!」
「うちの家族を感染させるなんて!!」
いろんなお気持ちはわかります。
でも、どうかこのどうにもならない状況をご理解いただければと思います。
病院や施設のスタッフも「なんか痒くなってきた気がする(涙)」と感染と隣り合わせて働いています。感染を持ち帰り家族に影響を及ぼすリスクも背負っています。
あなたが家族を大事に思い心配されているように、
スタッフにも家族がいて、ひとりの人間であることを覚えておいてほしいです。
ここまで、疥癬という感染について説明してきました。
もし身近で起こったら、感染拡大しないよう早期対応を心掛けていく知識にしていただければ幸いです。
とはいえ感染しないことが一番ですけどね!
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