おじいちゃんやおばあちゃん、自分の親が一人暮らしをしている。心配ではあるけど、自分の生活もあるので同居は無理。遠方から数回様子を見に行くことはあるけど、今以上の世話は難しい。
同居が難しい人、いつかは同居を考えている人、いろんな人がいると思います。
「一人で暮らせるうちは、ひとりで住んで欲しい」そう思っている人もいると思います。
そんな人たちに少しでも参考になる資料になればと思い、この記事を作成しました。
実は、要介護状態等区分の中で最も症状の重い状態である要介護5の人でも、独居生活を継続している人はいます。
要介護5というのは、立ち上がって歩くことも困難で、1日中ベッドで寝たきりの状態です。
作業療法士として訪問リハビリで在宅介護に携わっていたとき、重度介助状況で在宅生活を継続している人を担当しました。
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要介護5の人が独居って無理なの?
この記事では、実際に在宅介護で生活している要介護5の独居生活をご紹介し、日本の要介護者のいる世帯構造などについてのデータを交えて重度要介護者の独居生活について考えていきます。
参考にした資料は、国民生活基準調査(厚生労働省)
要介護5でベッド寝たきりでも独居を継続できた人
ヘルパーやリハビリなどを訪問サービスで上手く組み合わせることで、寝たきりレベルの重度介護者でも在宅介護を継続することが可能です。
要介護5に相当すると、使える介護サービスの量も多くなります。
実際に担当した独居で要介護5の男性利用者さん
日中はベッドでラジオを聞いて過ごす。食事は1日1回だけ。午前に来る訪問ヘルパーが、リフトを使用してリクライニング車椅子へ乗り移り介助。そして昼食の準備と、1時間かけて食事介助を手伝います。
2~4時間は一人で車椅子に座ったまま過ごし、夕方に日替わりでやってくる看護師かリハビリスタッフの介助でベッドへもどり就寝。
入浴は週2回、リビングに専用の浴槽を用意して行う訪問入浴。
通院するには長時間の付き添い介助で費用がかさむため、往診(家にお医者さんが来てくれる)制度を利用。栄養状態が悪くなっていたら、臨時で点滴などで補給し、全身チェックを行う。
認知面はしっかりされており、銀行の口座管理もバッチリ。
自由気ままに生きてきたため、家族も親族も疎遠に。頼れる身内はひとりもおらず。70代で重度障害者になり、施設入所も考えたけど、ここまで来たら一人でのんびり死にたいと独居生活の継続を決めたそうです。
重介助で独居をつかみ取るには協力者が必須
要介護5レベルの重度要介護者が、独居生活をつかみ取るには協力者が必要です。中でも、介護サービスを計画するケアマネージャーやその他の事業所の理解と協力がないと成り立ちません。
ケアマネージャーとは
在宅生活を送る上で、いわばサービスとスケジュールを組むプランナーのような職種です。このプランに伴って、居宅サービスを利用したり、車椅子やベッドなどの福祉用具のレンタルができるようになります。
でもこのケアマネージャーさん、一筋縄でいかない人もいたりして。「こんな状態で在宅介護?まして独居なんてあり得ません!!」と協力が得られにくい人もいます。
対応できる内容は事業所によって異なる
ケアマネージャーが理解を示してくれたら、今度はプランに沿ってサービスを提供してくれる事業所との個別契約です。
例えば、訪問リハビリの事業所とひとまとめに言っても
- ベッド上でのマッサージだけの事業所
- 歩行練習や調理練習をしてくれる事業所
- おむつ交換もしてくれる事業所
- 家族指導を丁寧にしてくれる事業所
などなど、選ぶ事業所によって許容範囲が大きく異なります。
重度な介護が必要な人が独居生活を送るためには、多少融通の利く事業所を見つけ出す必要があります。
融通の利く事業所と出会えたら独居は成功しやすい
私が以前働いていた訪問リハビリは、昔ながらの訪問看護ステーションという事業体制でした。上司がとても理解のある人で、本当に自由に仕事をさせてもらえました。
訪問リハビリでは本来おむつ交換はしないのですが、毎回リハビリの前におむつ交換をしてから開始する利用者さんもいました。
このような融通の利く事業所に出会えたら、おむつ交換のための訪問ヘルパーの回数が1回減った分、リハビリもおむつ交換も2つのサービスを同時に受けることができます。
要介護5で独居生活を送った最期
5年ほど寝たきりの状態での独居生活を送りました。
途中まではうまくいっていたのですが、やはり寝ている時間が長く、車椅子で同じ場所に体重がかかている状態が長く続くためお尻に褥瘡ができてしまいました。
褥瘡とは
体重で圧迫された場所の血流が悪くなり、傷ができてしまうこと。「床ずれ」とも言われています。
お尻の褥瘡は、一度できてしまうと完治するまでに時間がかかります。治すためには、頻繁な除圧(体を動かして圧力を逃すこと)が必要になるため、定期的な体位変換を行うことになります。
褥瘡の治療のために、約1か月の入院治療となりました。少し軽減したので一時退院されましたが、また悪化したため再入院。そうこうしているうちに、入院中に肺炎をこじらせ最期は病院での看取りとなりました。
入院した病院が、訪問看護ステーションの系列病院で、私もそこの職員だったため、入院中も私がリハビリ担当をしました。
あれだけ自由を求めた人だがら、入院になって辛いだろうな・・・と思って生前に心境を聞いたことがあります。すると意外な答えが返ってきました。
「ずっと一人で頑張ってきたけど、やっぱりそばに誰かいるって安心だね」
途中から意地で独居生活を継続していたそうです。どこかでもっと、誰かを頼りたい気持ちがあったけど、「いまさら施設に入りたいなんて言えない」と思っていたそうです。
まとめ:要介護5レベルでも独居は可能。ただし・・・
要介護5でも独居生活は不可能ではないということが分かりました。
しかし独居で在宅介護を行うというのは、常に生死と隣り合わせということです。
そして、やっぱり独居は寂しいのです。
いろんな理由があって独居生活を選ぶ人がいますが、常に心の声に耳を傾けられる存在でいたいと、この利用者さんを通して思いました。
今現在、同居をしようか、独居を継続してもらおうか悩んでいる人もいると思います。
何か少しでも心に響くものがあれば、幸いです。
他にも独居生活をされるこんな患者さんを担当しました。
- 重度認知症でベッドからの転倒を繰り返す要介護4の独居支援
- 要介護2でやっとこさ家事をこなしていたけど、ある日訪問すると・・・
この記事の内容が参考になればイイネ👍をお願いします。
要望があれば他の独居ケースについても記事作成をしてきます。
※長くなったので独居世帯のデータ解析については、次回。お楽しみに!
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